培養同定検査
下痢や傷口の膿、中耳炎など感染症が疑われる患者さんの材料から、病気を起こしていると思われる菌をさがしています。細菌は、1~4μmの小さな生物なので、顕微鏡を使って菌を観察したり、菌を目に見える大きさに増やしたりします。その中から病気を起こしていると思われる菌の性状を検査して、菌名を決めています。
病原体遺伝子検査
患者さんから提供された検体から、特定の菌の遺伝子や、薬剤耐性菌の遺伝子を検出しています。また、呼吸器疾患の原因となる細菌やウイルスがいないか、複数種類について同時に検査することもできます。
情報提供
院内向けの情報紙などに分離菌状況を集計し発行しています。
また、厚生労働省の院内感染対策サーベランスや山形県感染症発生動向調査に協力し、病原微生物検出情報を提供しています。
院内向けには検出された菌の数や、どの抗菌薬がどの程度有効なのかを集計した「アンチバイオグラム」を発行しています。
コラム:結核について
今回は結核菌の検査法について紹介します。
結核は、聞いたことのあるとっても昔の病気だと思っていませんか?
しかし、結核は世界的に増えていて、日本も例外ではありません。厚生労働省も結核対策の強化に取り組んでいます。
塗抹検査(結核菌を探す)
患者さんから提出された検体を集菌してスライドグラスに広げ、蛍光染色をします。
この染色では、結核菌は黄色く蛍光を発します。私たちは、顕微鏡を使ってこの菌がいないかを探します。
培養検査(結核菌を増やす)
結核菌は他の菌と比べ目に見える大きさ(コロニー)に増えるまで時間がかかります。(右写真)
(当院は外注検査により実施しています)
同定検査(結核菌なのかを調べる)
培養で発育した菌が結核菌か調べます。当院ではPCR検査により喀痰等から直接結核菌の遺伝子を検出しています。
※PCR検査とは、喀痰など患者さんから提出された検体の中や、培養して発育した菌が、結核菌の遺伝子をもつか調べる検査です。
薬剤感受性検査(どの薬剤が効くのか)
一定の濃度の薬剤(抗結核薬)が含まれている培地に菌を摂取して発育を観察します。
結核菌の検査は、患者さんの診断や治療に役立つ情報を提供するのが第一の目的ですが、この菌は、結核予防法で届出が義務付けられた伝染病ですので、結核対策の上でも重要になってきます。私たち臨床検査技師は、公衆衛生にも貢献しています。
さて、もし、結核に感染するとヒトの肺は、どのようになるでしょう。
病理検査は形態学的検査として生検組織診、手術切除材料の肉眼および組織学的診断、細胞診を行っています。腫瘍が良性のものか、悪性のものかを調べるのが主な業務です。しかし時々、細菌、真菌、ウィルスに感染していると思われる病変を見ることがあります。なかでも最近感染者が増加しているのが結核です。この結核菌に感染した病変の病理検査の進め方を紹介します。
病理検査室での結核の検査
「レントゲン写真に影が写っている」という話を聞いたことがありませんか?
腫瘍や肺炎のときだけでなく、結核のときも影が写ることがあるのです。結核菌が肺の中に入り込み、炎症を起こし、さらに病態が進むと肺に空洞を作ることもあります。それがレントゲン写真に影となって写るのです。
肺に空洞?
結核菌が入り込むと、正常な組織を壊しながら炎症がひろがり、真ん中がぬけてしまうこともあります。
これが空洞化した組織です。まわりの白っぽく見えるところは、炎症を起こしている組織です。ここに結核菌があるかどうか、病理組織検査をします。
病理組織検査
体内から取り出された肺などの臓器をホルマリン固定し、アルコール、キシレン、パラフィンを浸透させ3μmに薄く切り、HE染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)をします。
顕微鏡で拡大してみると炎症細胞が見られます。(40倍拡大)
ここに結核菌を染め分ける特殊な染色、チールネルゼン染色をします。
赤色の小さく細長く見えるものを観察することができます。
これが結核菌です。(400倍拡大)
以上が、結核菌が体内に入り込み、炎症などさまざまな反応を起こした組織と、その中に見られた結核菌です。
喀痰からも、結核菌が見つかることがあります。喀痰から結核菌を見つけ出すことは同じでも、細菌検査室では、生きたままの状態で発育させる方法で検索しています。