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脳腫瘍<脳神経外科>

はじめに

 脳腫瘍というと皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか? 「脳腫瘍は怖い病気で助からない。」と考えている人も多いと思います。テレビドラマや映画などが影響しているのかもしれません。事実、悪性脳腫瘍が少なくありませんが手術で完全に摘出でき治るものや薬剤、放射線治療で進行を抑えられる腫瘍もあり、CTやMRといった診断機器の発展とともに良性腫瘍が多く見つかるようになってきています。脳という臓器の特殊性で、手術などの治療により後遺症が残るのではないか、と心配される方も多いと思いますが私たち脳神経外科医は後遺症を残さないよう安全に尚かつ最大限の治療効果が得られるように日夜頑張っています。脳腫瘍は細かく分類すると150種類にもなりますが今回は代表的な脳腫瘍について記載いたします。

脳腫瘍の症状

 脳腫瘍に特有な症状というものはあまり多くありません。ホルモンを分泌する下垂体腺腫では肥満や特徴的な顔貌を呈したりすることはありますが、腫瘍のできた部分の機能を障害する症状が多いといえます。脳は場所によって機能が割り当てられています。また言言語や計算などを左右どちらかの大脳が担当していることが多いのですが言語の中枢が存在する方を優位半球と言います。右利きの大部分の人は左側の大脳が優位半球です。左利きの人は半々と言われています。また手足の運動や感覚も対側の脳が支配しています。右手足は左脳、左手足は右脳が命令したり感じ取ったりしています。そこで腫瘍が発生した部位で症状が異なります。前頭葉では反対側の手足の麻痺や優位半球であれば言語障害などが起こります。また両方の前頭葉が障害されると認知症様の症状を呈することが多くなります。頭頂葉では対側の感覚障害や、服がきちんと着られなくなったり、左右がわからなくなったりすることもあります。また後頭葉では視野障害が出現することがあります。
 また、脳は頭蓋骨という骨に囲まれていますので腫瘍の容積が増えた分や脳浮腫(脳のむくみ)で頭蓋内圧が高くなり、頭痛、嘔吐が出現することがあります。特に睡眠中に頭蓋内圧が高まりやすいことから脳腫瘍の頭痛は朝方に多いと言われています。その他、てんかん発作で発症することも少なくありません。
 原発性の脳腫瘍は1年に10万人あたり約14人程度発症すると言われています。
 これは消化器の癌や、肺がんなどと比べると少ない数字です。

1.神経膠腫

 脳腫瘍の代表というと神経膠腫がまずあげられます。神経膠腫は脳腫瘍の中で約25%を占めています。神経膠細胞はグリアと呼ばれますが、手足を動かすなどの機能を持った神経細胞を取り囲み神経細胞の保護や機能を高める役割を担っています。この神経膠細胞が腫瘍化したものが神経膠(Glioma)です。つまり元々脳の中に存在する細胞が腫瘍化するため腫瘍は脳の中に浸潤性に拡がり、あたかも手の指を開いたように増大する特徴があります。腫瘍化する神経膠細胞の種類によって腫瘍も細かく分類され予後なども変わります。悪性度に応じてグレード分類し1から4までの数字で表され、数字の大きい方が悪性度が高く、年齢とともに悪性度の高い腫瘍(膠芽腫:グレード4)が多くなり治療も困難で予後も悪くなる傾向があります。治療は手術による摘出と放射線、化学療法の併用が基本です。低悪性度腫瘍に対しては全摘出されれば経過観察ということもあります。低悪性度神経膠腫は5年生存率70〜80%と比較的良好です。悪性度の高い神経膠腫は生存率が低下し、特にグレード4の膠芽腫はなかなか治療成績が上がらず5年生存率10%以下と脳外科医がもっとも頭を悩ます腫瘍の一つでしたが近年放射線治療に加える化学療法剤が開発されたこと、術中に手術用の顕微鏡から特殊な光を当てることで腫瘍を蛍光発色させ発色部位を摘出することにより摘出率の向上を目指せる薬品・技術の進歩、さらに化学療法剤を含ませた留置剤を直接摘出面に留置し術中から化学療法を行う薬剤の開発など治療の選択肢が拡がり、今後予後の改善が期待できる環境になってきています。
また、最近では腫瘍の遺伝子を調べることにより化学療法の効きやすさや予後についてもかなりの部分を判断でき、治療選択に有用な状況となってきています。
 このようにこれまでなかなか治療が難しかった腫瘍ではありますが今後研究が進み更に有効な治療法が開発される期待が高まっています。

1.神経膠腫

2.髄膜腫

 MR等、診断機器の進歩により発見されることが多くなってきている腫瘍です。髄膜腫は脳の表面を覆っている硬膜から発生することが多く、実際には脳の外から発生する腫瘍です。発生頻度は脳腫瘍の25〜30%で、脳腫瘍中最も多く基本的には良性腫瘍です。神経膠腫が男性に多いのに対し、髄膜腫は女性に多く男性の2〜3倍にもなり女性ホルモンの影響を受けているとも言われています。髄膜腫は脳の外側にある硬膜という膜から発生することが多いですので、症状は脳や神経を圧迫することで起こります。てんかん発作で見つかる事もありますし、頭痛の精査で見つかる事もあります。また脳ドックなどで偶然見つかる事も多くなってきています。ゆっくり増大するものではかなり大きくなるまで症状を呈さないものもあります。治療の基本は手術による摘出で円蓋部と言われる脳の外側に当たる部分の比較的小さいものでは全摘出が可能で再発も少なく予後良好です。化学療法や放射線治療は一般的には行われず、飲み薬などで治療することもありません。大きくなり脳との癒着が強くなった髄膜腫や脳の底の部分いわゆる頭蓋底部に発生し神経や血管を巻き込んでいるものでは治療が困難な場合もあります。髄膜腫の1割程度は悪性の経過をとり増大速度が速く再発もしやすいと言われています。悪性の髄膜腫の対しては手術だけでの治療は再発が多く、手術後に放射線治療が必要となります。良性の腫瘍とはいえ発見された場合には定期的な検査を受けていただくことが必要です。

2.髄膜腫

3.神経鞘腫

 脳や脊髄から出てくる末梢神経は神経鞘という鞘(サヤ)で包まれています。この鞘はシュワン細胞と呼ばれる細胞で形成されており、このシュワン細胞から発生した腫瘍が神経鞘腫です。全脳腫瘍の約10%で良性腫瘍です。40〜60歳代に好発し女性にやや多く男性の約1.3倍です。有名なものは第8脳神経から発生するもので聴神経鞘腫や前庭神経鞘腫と呼ばれます。難聴やめまい等にて発症することが多く手術による摘出も重要な治療法ですが併走する顔面神経麻痺等の合併症も多く手術による治療は慎重に判断することが必要です。またガンマナイフ等の定位放射線照射が有効であり大きさや症状、年齢等から治療法を決定します。

4.悪性リンパ腫(中枢神経原発)

 脳にはリンパ組織がなくリンパ腫発生の機序は不明ですが、最近高齢化とともに増加傾向にあり脳腫瘍の約3%を占めています。病名にもあるとおり悪性の腫瘍です。またAIDS(エイズ)などの免疫不全状態では合併が多いと言われています。画像診断にて脳原発の悪性リンパ腫が疑われた場合には生検術(腫瘍の一部を組織診断のために摘出すること)を行い病理検査で診断確定後、化学療法と放射線療法を行います。化学療法は放射線治療前にメトトレキセート(MTX)と言う化学療法剤の大量療法を行うことで生存期間の延長が得られています。手術による腫瘍の摘出は神経学的後遺症の危険性が高く摘出術ではなく生検術が推奨されています。

5.転移性脳腫瘍

 転移性脳腫瘍は脳以外の部分から転移してきたものです。転移性ですので原発性脳腫瘍には含まれません。最も多いのは肺がんの転移で転移性脳腫瘍の半数以上(52%)を占めます。次いで多いのは乳がんの転移(9%)です。近年、大腸・直腸癌からの転移が増加傾向です。大きいもので単一病巣のものでは手術による摘出が選択されます。しかし多発性で麻痺などを起こす部分に近い病変や手術で到達困難な病変などに対してはガンマナイフ等の定位放射線治療装置による治療が行われます。非常に多数の転移巣が脳全体に存在するときなどには脳全体に放射線を照射する全脳照射が必要になる場合もあります。

6.髄芽腫

 小児悪性脳腫瘍の代表的な腫瘍です。15歳以下の小児10万人あたり年間0.5人の発症で脳腫瘍の約0.6%を占めるまれな腫瘍です。我が国では年間80〜100人程度発症していると考えられます。10歳以下の小児で、小脳虫部に好発し初発年齢のピークは6〜7歳です。やや男児に多い傾向があります。以前は予後の悪い腫瘍でしたが手術による摘出と組織診断の後、適切な化学療法と放射線治療にて長期間の無病生存が見込める状況になってきています。3歳未満の小児では精神発達遅滞や身体発達遅延を回避すべく、放射線治療を3歳以上の時期まで延期する治療法が一般的です。

おわりに

 以上、代表的な脳腫瘍について簡単に書かせていただきました。当院での脳腫瘍手術は年間40例前後と多く安心して治療を受けていただけると考えています。ご心配な事などありましたらお気軽に受診してください。

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