基本方針
麻酔とは、手術中に痛みを感じないようにすることだけが目的ではなく、手術中の呼吸や循環の維持などの全身管理も含まれており、安全に手術が行えるようにすることが麻酔科の仕事です。また、手術が終わった後の鎮痛法や、術後の呼吸・循環・脳神経系などの機能を維持して術後の回復を助ける努力も手術中から始まっています。
2012年に手術部のモニターシステムが最新のものに更新され、自動麻酔記録装置も導入されました。2016年3月にはハイブリッド手術室(手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室のことで、より高度な外科手術が可能になります)が導入されました。このハイブリッド手術室導入により、従来は非常に困難で大きなストレスを患者さんにかけていたような心臓血管外科手術や骨盤骨折の手術などが、より小さなストレスで可能になりました。さらに、満を持した形で2022年5月からは、ロボット支援手術システムも導入されました。ロボット支援手術も、今後当院を代表するような手術の一つとなっていくものと期待されています。
一方、これら高度な手術を安全に行うためには、安全な麻酔管理が必須です。充実した設備と経験豊富な手術部スタッフの協力のもとで、これまで以上に安全な麻酔を提供しなければなりません。さいわいなことに、当院には集中治療室に集中治療専門医が常駐していますので、難しい手術の周術期管理に対する体制も充実しています。このように、各診療科の専門医と連携しながら、一人一人の患者さんに最良の医療が提供できるよう努めています。
診療内容・特徴等
現在、当院麻酔科は常勤医7名でそのうち2名が麻酔科専攻医です。当院は山形県の基幹病院として県内全域から患者さんが紹介されてきます。手術の対象となる患者さんは新生児から90歳を超える高齢者まであらゆる年代におよび、重い合併症(特に心・肺・脳血管合併症)のある患者さんの手術も増えています。また、救命救急センターを併設しているため重症の緊急手術も多く、より高度な麻酔管理が求められます。
最近の麻酔薬および麻酔関連薬の進歩は著しいものがあります。また、患者の状態を把握するためのモニターや気道確保の方法も様々なものが考案されています。これらの最新の機材や知見をできる限り取り入れて、より良い麻酔管理を目指して努力しています。
麻酔の安全と共に術後の疼痛管理も重要な課題です。術後鎮痛には硬膜外麻酔が最も有効とされてきました。しかし、術前の合併症や術後肺塞栓予防のために抗凝固薬や抗血小板薬を投与される患者さんが多くなってきています。このような患者さんでは硬膜外麻酔を行うことが危険な場合があります。最近、超音波診断装置の精度の向上により、安全かつ有効な神経ブロックが可能となり注目されています。当院では、山形県内の他病院に先駆けて各種神経ブロックの応用を進め、四肢の神経ブロックのみならず、体幹部のブロックも積極的に行い、術中管理および術後鎮痛に良好な結果が得られています。また、患者さん自らが必要に応じて鎮痛薬を注入できるPCA(Patient-Controlled Analgesia)ポンプの台数も増え、適応のある患者さんの多くに施行可能となりました。術後、痛みを感じたら患者さん自身がボタンを押して鎮痛剤を投与するこというシステムです。患者さんが、我慢することなく早めに鎮痛剤を自ら投与することにより、より痛くない時間を長くすることが可能になります。これからも、患者さんの安心と満足が得られる良い麻酔を提供できるよう努力していきたいと考えています。
当院は研修医を育てる教育病院としての性格も持っています。麻酔の研修では指導医と研修医の一対一の指導を行い、麻酔の安全を確保しながら、小児や心臓麻酔にいたるまで経験できる充実した研修となるよう努めています。先に述べたように、当院は手術件数も多く、その内容も多岐にわたっています。充実した設備と多彩な症例に恵まれた当院は、麻酔科の専門医を目指す医師にとっても良い機会を提供できるものと考えます。
スタッフのご紹介
氏名 | 卒業年・資格 | 専門・研究分野 |
---|---|---|
高岡 誠司 | 昭和63年卒 |
麻酔一般 神経麻酔 |
星川 民恵 | 平成12年卒 |
麻酔科 |
押切 智子 | 平成19年卒 |
麻酔一般 |
渡邊 具史 | 平成23年卒 |
麻酔一般 |
須田 拓郎 | 平成23年卒 医長 |
麻酔一般 心臓麻酔 |
小森谷 祐太 | 平成30年卒 麻酔科標榜医 |
麻酔一般 |
伊藤 明伸 | 令和4年卒 | 麻酔一般 |