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脳腫瘍の最新の治療について:脳神経外科

脳腫瘍の最新治療

当施設で特色を持って行っている治療についてご紹介します。

脳腫瘍の治療には、その他の部位の腫瘍と同様に手術放射線療法化学療法の3つの柱があります。腫瘍の性格、内容によって、それらを適宜組み合わせた治療が行われます。大切なことは、それぞれの治療法の長所と短所を充分に考慮し、時には1つの方法のみで治療を完結させることなく、総合的に治療することが重要です。

1.手術療法

治療を必要とする脳腫瘍のほとんどで手術が必要です。手術の目的は、診断の確定と腫瘍の摘出です。脳腫瘍の種類は150にも及び、一部の腫瘍を除き、その正確な診断には腫瘍を取りだして顕微鏡で調べる、「病理組織検査」が必要です。その「病理組織検査」の内容によってその後の治療法が決まります。診断の確定だけが必要な例では、CTで位置決めをして局所麻酔下で針生検術を行う、「定位的腫瘍生検術」が行われることもあります。この方法は局所麻酔で行うことが出来ますので、患者さんにとって侵襲の少ない方法ですが、採取される腫瘍の大きさは極めて少量ですので、治療を計画するに当たっては時に診断が不十分、あるいは不確定のことがあり、我々は積極的に進めてはおりません。

手術は手術用顕微鏡を使用した精密な手術が行われます。必要に応じて、運動誘発電位などの術中モニタリング、神経内視鏡や手術用ナビゲーションを使用し、より安全かつ脳損傷の少ない、脳に優しい手術を行っています。ただし、脳は機能的組織であり、場所によっては、微細な損傷でも意識の障害、高次機能の障害、言葉の障害、手足の麻痺等が出現する危険性がある臓器です。従って、術前あるいは術中の判断で、手術操作が脳の機能障害を来す危険性があると判断した場合は、それ以上の無理な摘出操作をせず、出来るだけ患者さんのQOL(生活レベル)を低下させないように努力します。発育速度のゆっくりな、いわゆる良性腫瘍の場合は手術摘出術のみで経過を観察することが多いですが、発育速度の速い(と予想される)腫瘍の場合は、以下に述べるように放射線治療や化学療法を組み合わせた治療を行います。

2.放射線療法

当院における脳腫瘍の放射線治療としては、「ライナック」を使用した放射線治療と、コバルト60を使用した局所を精密に治療できる「ガンマナイフ治療」が可能です。ガンマナイフは平成13年春から当院で稼働が開始され、これまで山形県内唯一の施設として十数年の治療実績があります。
ガンマナイフに関する詳細は別のページで述べられていますので、参照して下さい。
ガンマナイフのご案内

ライナックは広い範囲の病変をカバーすることが出来るので、大きな腫瘍や頭蓋内に広く広がった腫瘍に有効です。また、少ない線量(エネルギー)で何回も繰り返して治療するため、大切な神経の損傷を極力抑えることが出来ます。しかし、繰り返し治療する必要があるため、短くて2週間から時に6週間くらいの治療期間が必要です。

2011年からは、強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)と言う最新のシステムでの治療が可能な、ライナック治療機器が導入されています。これは、コンピュータで治療装置を制御し腫瘍部分に放射線を集中して照射できる新照射技術で、機能的臓器である脳の放射線障害を出来るだけ少なくすることが出来ます。

ガンマナイフは、ほとんどが1回の照射で治療しますので、1日で治療が終わります。しかし、広い範囲に広がっている腫瘍や、あるいは大きな腫瘍の治療は脳や神経への影響が出る危険が高くなり、使用できません。当院では、放射線治療に際して、この両者の長所と短所を考慮に入れた、総合的な計画を立てて治療を行っています。

3.化学療法

以前、脳腫瘍には有効な化学療法はないと言われた時期もありましたが、最近は、脳腫瘍の治療においても、化学療法は重要な役割を担う様になって来ております。すなわち、化学療法の進歩と、症例の積み重ねにより、病理組織診断により適切な化学療法剤を選択、組み合わせた積極的な治療が有効であることが分かってきております。個々の腫瘍とそれに対する化学療法についてはさまざまな情報入手手段がありますので、本稿では省きますが、当科では、必要に応じて、前向きに、積極的な化学療法を行っております。化学療法は、1-2回で終えることはなく、2年から時には数年にわたり繰り返し行うことになります。この為、患者さんご本人の精神的肉体的負担は極めて大きなものがあります。我々治療を担当する医師、看護師、薬剤師などは全力を挙げて治療に当たり、さらには患者さんへの心のサポートにも心を配ります。さらに大切なことは、ご家族、学校や職場を含めた周囲の理解、暖かい思いやり、協力が必要です。不安なことや心配なこと、分からないことがありましたら、ご遠慮なく主治医や担当の医師、看護師などにお尋ね下さい。

日本においては2006年9月に発売された、テモゾロミド(テモダール TMZ)は,アルキル化剤に分類される抗悪性腫瘍剤で「悪性神経膠腫」を効能効果とする新有効成分医薬品であり、日本においても「悪性神経膠腫」に対しては近年標準的治療薬になりつつあります。欧米主要国では、1999年に悪性神経膠腫の治療薬として導入され、2005年には初発の膠芽腫に対する治療薬として認められております。日本では未承認薬使用問題検討会議において早期に承認申請を行うよう指示された薬剤です。当院でも、2006年からは、本疾患の初期治療薬として導入しております。

一方、従来当院での神経膠腫に対して標準的治療としていたニドラン(ACNU)の高流量動注療法は、全身への副作用を軽減し、腫瘍内の薬剤の濃度を上げることが出来、10年間に初発の膠芽腫だけで16例の治療実績があります。これまでの動注療法の欠点である「層流」を無くす工夫をして(基礎データは、Journal of Neuro-Oncology , 41:235-246, 1999.に報告)、より高流量で注入する「高流量動注療法」を行い、腫瘍内濃度を高め、大きな成果を得ております。この方法により、副作用が少なく(NCI-CTCグレード3以上0%)、治療効果の高い(動注可能な症例に限っていますが、成人大脳膠芽腫で全生存率(OS):5年40%、生存期間中央値(MST):37ヶ月)良好な結果を得ております。当院では、本治療法を、テモダール無効例、再発例等に対するセカンドライン治療として、また、放射線治療を控えるべきと判断した例などで今後も行って行く予定です。

さらに2013年からは悪性神経膠腫に対して術中に腫瘍摘出面に留置し、徐々に抗腫瘍剤BCNUを放出する脳内留置剤(ギリアデル)も使用できるようになりました。また脳腫瘍の血管新生を抑制し脳浮腫に対して強い効果を示すベバシズマブ(アバスチン)といった脳腫瘍以外でも治療実績のある薬剤が使用可能となりました。

当科ではこれら化学療法の感受性に関する遺伝子検索を、新潟大学脳神経外科の協力の下に行っております。個々の腫瘍におけるMGMTや1p/19qLOH、IDH1/2等の検索から治療方針決定や薬剤感受性、予後との関連性の検討を行っております。

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