放射線部
組織反応・確率的影響
放射線の影響は、組織反応・確率的影響のふたつを考慮しなければなりません。
組織反応
放射線による細胞損傷によるもので、ある線量を超えて被ばくすると障害が現れます。この線量をしきい線量といい、対象となる臓器・器官によってそれぞれ異なっています。しきい値以下の線量では、傷ついた細胞は自己補修機能により回復します。
発がんや、遺伝的影響以外の障害はすべて組織反応に分類されます。
しきい線量について
放射線の影響が出現する最小の線量です。ある集団が同様に被ばくしたとして、そのなかの1~5%の人々に異常がみられる線量とされています。
確率的影響
がんや白血病の発症と、寿命などの遺伝的影響のことを言います。被ばく線量が増えれば、それに比例して影響の発生率も上昇します。放射線の影響なのか、自然発症なのかの見極めが難しいため、特に低線量被ばくにおける影響の度合いは説明が難しいようです。しかし、おおむね100mSvを超える被ばくを受けた時、有意な発がんリスクの上昇があるというのが専門家の間での一致した見解です。UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)発表の「先進工業国における成人の平均被ばく量」によると、胸部写真が0.14mSv、腹部写真が0.5mSv、CTが8.8mSvとなっています。現在のCT検査ではもっと線量を与える必要がある検査もありますが、これらの検査で発がんを心配する必要はないように思います。今現在の体の異常を見つけることの方が非常に有益であるとも言えるのではないでしょうか。
ここで注意しなければならないのは、「がんになる」のではなく、「がんになる可能性が高まる」ということです。
それに絡んだ興味深いレポートがあります。生活の周りの様々なものが、自分の寿命をどの程度短くする可能性を持っているかを割り出したものです。
独身男性 | 3500日 |
たばこ29本/日 | 2250日 |
交通事故(車) | 207日 |
酒 | 130日 |
放射線検査 | 11日 |
自然放射線 | 8日 |
コーヒー | 6日 |
参考:BERNARD.L.COHEN&I-SING.LEE