主な疾病・疾患
主な疾患
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)と粘膜切除術(EMR)
当科は以前から、山形県における胃癌の集団検診及び胃癌の診断と内視鏡的治療において中心的役割を果たしてきました。その伝統は今でも変わらず、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術に関しては現在でも国内学会や国際学会に発表を続け、厚労省班研究やJCOGの班員にも選ばれ、評価されています。
消化管の内視鏡的治療においては、平成14年からはより大きな癌(適応拡大病変)を対象とした内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を導入し、食道・胃・大腸腫瘍に行っています。ESDではウオータージェット付きマルチベンデイングスコープやSBナイフ、CO2送気、高周波発生装置VIOなど最新機器を導入し、最先端の治療を行っています。大腸の内視鏡的粘膜切除術も平成16年には年間470件を越え、LST(側方発育型腫瘍)や早期癌がその30%を占めています。
消化器癌に対する化学療法
内視鏡的治療もさることながら、当グループでは消化器癌に対する化学療法も積極的に施行しており、平成19年4月から念願の外来化学療法センターも開設され、化学療法は入院から外来へとシフトしつつあります。外来化学療法なども含めた腫瘍外来は、当院腫瘍内科および山形大学医学部腫瘍内科に御協力をいただいています。
ピロリ菌除菌による胃癌予防
消化性潰瘍に対するピロリ菌の除菌療法も多くの経験を有し、当グループが山形県臨床ヘリコバクターピロリ研究会の事務局として平成14年の市民公開講座を開催し、平成18年には除菌による胃癌予防効果と内視鏡検査の重要性を明らかにし、総会や国際学会で広く発表してきました。除菌による胃癌予防の可能性は、当グループの深瀬が平成20年5月に米国サンデイエゴの学会で世界に向けて発表し、同年8月にはその論文が世界的に有名な医学雑誌ランセットに掲載されました(Lancet 372 : 392-397, 2008)。この論文が根拠の一つとなり、平成25年2月21日から「ピロリ菌陽性の慢性胃炎」が除菌適応疾患になりました。
腸疾患
さまざまな癌の中で大腸癌の罹患数は男女あわせて最も多く、死亡数でも男性で3位、女性では1位です。大腸癌はかなり進行するまで症状がないため、早期発見のためには大腸を内視鏡検査などで直接大腸を検査する必要があります。また健診で便潜血検査の陽性を指摘された場合にも大腸内視鏡検査等が推奨されています。
当院では、拡大内視鏡を用いてより精度の高い大腸内視鏡検査を行っています。その一方で、腹部手術の既往などで腸に癒着がある場合は、積極的に細く柔らかいスコープを使用することで苦痛の軽減を図っています。状況によっては鎮痛剤の使用を考慮します。通常のポリープ切除だけでなく、平坦型の腫瘍に対しても内視鏡治療を積極的に行っています。
その他、大腸憩室出血や虚血性大腸炎の方が希ならず来院されます。時には小腸からの出血例もありカブセル小腸内視鏡とバルーン式小腸内視鏡を駆使して出血源の検索と治療に力を入れています。
また、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)においては、免疫調整剤、白血球除去療法(GCAP)などを積極的に取り入れており、万が一の手術においても外科との協力体制をとっております。
大腸CT(CTコロノグラフィー)検査
健康診断の便潜血検査で異常を指摘されても、二次検査(精密検査)受診する率が低いという問題があります。その理由の一つに精密検査として行われる大腸内視鏡に対する抵抗感が強いことが指摘されています。
当科ではより検査の負担・抵抗感の少ない大腸CT検査(バーチャル内視鏡)を開始しました。まだまだ症例数は少ないですが、過去の大腸内視鏡検査が困難であった方などにも行う予定でおり、さらなる二次検診受診率の向上に寄与できればと考えています。
肝疾患について
急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変·肝がんと幅広く診療を行っています。B型慢性肝炎には核酸アナログ製剤を用いた抗ウイルス療法などを行い病状の安定と発癌抑制を目指します。C型慢性肝炎は直接作用型抗ウイルス剤によりほとんどの方が治癒しています。近年増加が目立つ脂肪肝については、肝硬変や肝がんとの関連が指摘されている代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の診断にカを入れています。MASHの治療の基本は食事療法と運動療法による生活習慣の改善であり、基礎疾患の治療に加え、条件に該当する患者さんには肥満症の治療薬を使用し内臓脂肪の減少および脂肪肝炎の進行抑制を目指します。
慢性肝障害の場合は、超音波検査と血液検査で肝臓の線維化を評価し、線維化が進行した患者さんには肝がんの早期発見を目指した定期検査を行い、食道静脈瘤の合併症がある場合は内視鏡治療を行います。
肝がんについては、肝臓の予備能と肝がんの大きさや個数を確認したうえで治療法を決定します。当院では肝切除、経カテーテル的肝動脈塞栓術、ラジオ派焼灼療法、薬物療法、放射線治療を行っており、最適な治療を外科、放射線科、緩和医療科と連携しながら実施しています。
胆膵疾患について
膵胆道系領域では、各種画像検査などを行い、正確な診断をモットーに診療に当たっています。また治療に際しても、患者さんと共に外科とも連携をとりながら最適な治療を行うよう努めています。①総胆管結石に対する内視鏡治療、②膵臓癌や胆管癌でみられる悪性胆道狭窄(閉塞性黄疸)に対するドレナージ、ステント留置治療などを中心に行っています。
その他
最近では社会的ニーズの高まりとともに経皮的内視鏡胃瘻増設術(PEG)の症例が増加しています。