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がんの治療目標と治療成績

食道がん

食道は下咽頭(のどの奥)に続き、胃の入り口までの約30cmの管腔臓器です。外科手術の対象になるのは、ほとんどが悪性腫瘍、つまり食道がんです。以前は胸を大きく開けて手術する開胸手術でしたが,現在は開胸せず小さな穴から手術する胸腔鏡手術で行っていますので,体の負担は以前より小さくなりました。

早期のがんに対しては、適切な治療法(手術,化学放射線療法,内視鏡下切除)を選択することにより、大半の患者さんが完全治癒されています。また進行がんに対しては、術前化学療法を標準治療として行っています。当科で扱った全食道がん患者さんの、がん治療の目安となるいわゆる5年生存率は60.7%でした。食道がんは患者さんによって進行度など様々ですが,ひとりひとりの患者さんにベストな治療法で治癒をめざしています。

食道がんの他に、食道胃逆流症や、食道アカラシアといった、良性疾患の外科治療にも積極的に取り組んでいます。

胃がん

当科では年間約150例の胃がんの患者さんを手術しています。このうち約半数が早期胃がんです。

早期胃がんに対しては機能温存を目的とした縮小手術を施行しています。胃の約2/3を切除する幽門側胃切除術が多いですが,胃全摘を極力避けるため,胃の上部を切除する噴門側胃切除や小さくても胃を残す(極小残胃)術式も行っています。これらの手術は従来の開腹ではなく,からだの負担が少ない腹腔鏡手術やさらに精度が高いロボット支援下手術で行っています。

進行胃がんでは、リンパ節郭清を伴う胃切除と術後補助化学療法が標準ですが,より進行した胃がんでは術前化学療法を行うなどして完治を目指す治療を行っています。より優れた治療を開発するために,積極的に臨床試験にも参加しています。

大腸がん

大腸がんは現在、手術により切除することが基本的な治療法となっていますが、近年その方法も著しく進歩し、がんの部位、進行度により手術方法が異なっています。

当科では,進行度に合わせた手術方法を取り入れ、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術を施行させて頂いております。術前の化学放射線療法なども行っております。また進行がんに対しては、がんの治療として可能な限り機能温存手術(排尿・性機能障害や人工肛門を避ける手術)をとり入れ、患者さんの手術後生活の質の向上に努めています。一方、さらに進んだがんには、拡大手術を行い、再発がん(肺転移、肝転移など)に対する外科的治療にも積極的に取り組んでおり良好な治療成績が得られています。

肝がん・胆道がん・膵がん

肝臓・胆道(胆嚢、胆管)・膵臓は、各臓器が隣接し、その働きも相互に巧みに連携しています。胃腸のがんに比べれば頻度も少なく、また早期発見も難しく、治療に難渋することも多いですが、手術手技の向上により以前に比べて安全で確実に行えるようになりました。

肝臓がんは、肝臓に原発する原発性肝臓がん(肝細胞がん・胆管細胞がん)と、他臓器からの転移による転移性肝臓がんに分けられます。原発性肝臓がんの多くを占める肝細胞がんは、以前は肝炎ウイルスが原因で生じる方がほとんどでしたが、肝炎ウイルスの駆除等によりウイルス性の肝細胞がんは劇的に減少し、現在は非ウイルス性の肝細胞がんが増加しています。その治療は、条件が揃えば初回から肝切除に踏み切ることもありますし、そうでない場合も、内科的治療を組み合わせながら集学的治療の一環として外科手術を選択することがあります。最近では、腹腔鏡を用いた肝切除にも積極的に取り組んでいます。転移性肝臓がんは、(原発巣の切除に加えて)肝切除をすることで、治療成績をかなり向上させることができています。必要であれば複数回の肝切除を行うこともあります。

胆道がんは大きくわけて胆嚢がんと胆管がんがあります。胆嚢がんは、肝臓に付着した部位から肝内に浸潤するだけでなくリンパの流れから膵臓へも進んでいきます。当院の胆嚢がん手術患者数は全国的にみてもかなり多く、その結果を踏まえながら、必要であれば肝切除や膵切除などを組み合わせた拡大手術を積極的に行っています。胆管がんは胆汁の通り道を塞いで黄疸などの症状を発現させるため、比較的発見されやすく、中でも下部(膵臓に近い方)胆管がんは、膵切除をおこなうことにより治癒が得られやすい病気です。上部(肝臓側)胆管がんは解剖学的位置関係から、大量の肝切除が必要になり、手術の難易度も高く、術前術後の細やかな管理が必要になります。消化器内科(胆膵内科)医師と連携しながら、治療成績向上に努めています。

膵臓がんは、症状が出づらいだけでなく、胃の背中側の後腹膜に位置し周囲の神経やリンパに容易に浸潤していくため、消化器がんの中でも最も治りにくいがんの一つです。切除可能膵癌に対しては、術前化学療法(抗がん剤治療)を行った上で切除を行い、術後も補助化学療法(追加の抗がん剤治療)を加えることで、治療成績の向上を目指しています。切除境界領域、切除不能膵癌に対しても、化学療法等で切除が可能になったと判断した場合、切除を行います。周囲の血管が巻き込まれている場合も、血管合併切除を行います。難治性がんの代表である膵臓がんに対して、決してあきらめることなく、治療成績の向上を目指していきます。

内鏡視下手術

鏡視下手術とは従来の腹部を大きく切開する手術法と異なり、内視鏡(腹腔鏡)などの機器を使用しながら小さな傷で手術を行い、しかも従来の手術同様の治療効果が得られる方法です。特徴としては傷が小さく美容的な意味を持つほかに、手術後の回復が早く早期の退院が可能であることがあげられます。

当科では胆嚢、胆管、大腸、食道、胃、肝、脾臓の疾患を中心に鏡視下手術をとり入れています。さらに、現在では、これまでの鏡視下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた「ロボット支援下手術」も行われる様になりました。内視鏡カメラとアームを挿入し、術者が3Dモニターをみながら遠隔操作で装置を動かし、その手の動きがコンピュータを通してロボットに忠実に伝わり、手術器具が連動して手術を行うものです。胃癌で開始して、現在は食道癌、直腸癌にも適用を拡げています。

しかし、どのような病気でもこうした手術が受けられると言う訳ではなく、これらの手術の適応は各臓器の専門の医師が、充分に安全性や病気の程度を検討した上で決定しております。

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